紀北町
基本情報
自治体名:三重県北牟婁郡紀北町
都道府県:三重県
自治体規模:町 / 村
自治体HP:https://www.town.mie-kihoku.lg.jp
シェアリングエコノミー活用の取り組み
概要
【地域の足の確保】
「住民による住民の移動手段の確保」という新たな方式の運送「あいのり運送」実証事業を実施し、その実現可能性や有効性及び諸課題について検証・抽出する。
取組主体:紀北町
導入前の状況 (課題)
- 2005年の2町合併時から人口が約20%減少し、高齢化率は43.3%と非常に高率。
- 町内唯一のタクシー事業者が2016年12月に廃業し、自由な移動手段が不存在。
- 路線バスは交通事業者による地域間幹線が2路線、町が廃止代替バス1路線とコミュニティバス2路線を運行しているが、いまだ公共交通空白地が16か所存在。
- 移動手段のない方が増えており、買い物や病院などに自由に外出できない状態であることから、交通手段の確保は喫緊の課題。
課題に対する取組
- 住民の共助による交通手段確保の取り組みとして、2018年9月18日より90日間の実証実験を開始(町内の一部地域を対象)。
- 地域で自家用車を所有する方がその車を使って、地域の移動手段のない方を、ドア・ツー・ドアで目的地まで移送。
- 自家用自動車による有償運送であり、道路運送法で定められた「公共交通空白地有償運送」の登録を受けて実施。
導入後の状況 (取組の効果)
- 運転手は8名の登録があり、運転者講習、運行前後の点呼、車両点検、地震発生時の対応など、安全の確保に努めた。
- 利用者は127名の登録があり、90日間で244運行、延べ370名の利用。
- 「あいのり運送」への満足度は肯定的な評価が70%以上、事業の必要性の認識については97%が肯定的な意見。
- 改善点への意見も具体的に寄せられており、現実的な手段として受け入れられている。
- 事前の期待以上に、実証事業後はその必要性・利便性を感じており、有効性が裏付けられた。
- 友人や運転手との会話を楽しむ機会として認識されている。
- バス停までの移動や、買い物の荷物を持って歩くことがつらい方が増えており、バスより細やかな運行の必要性が存在。
- 運転手の評価は、実際に貢献した経験から利用者より高く、将来の自分にとっても必要であるという認識も合わせて高い。
取組のポイント
サービスの認知度向上のための取組
- 区長や老人会長などに周知を依頼し、地区ごとに事業説明会や会員登録会、利用者説明会などを開催して、細やかな周知を実施。
- 実証期間中に、会員に対してダイレクトメール等を発信し、利用啓発を実施。
サービスの提供者(ホスト)・利用者(ゲスト)掘り起しのための取組
- 運転手は、安全性を確保するために公募はせず、2種免許所有者に優先して依頼したが、人数が不足したため、区長や地区の方から適任者の紹介を受け普通免許所有者に依頼を実施。
- 利用の候補者は、区長や老人会長に周知を依頼。
スマートフォンなどを使うことができない利用者向けの取組
- 配車は、配車センターを設置し電話による受付により実施。
- 携帯電話不所持者に対し、配車通信機器(呼出器、GPSトラッカー)を貸し出し、外出先からの連絡手段を確保。
- 配車通信機器は、ボタンの押下により配車センターに会員番号と位置情報が通知され、配車センターから返信の電話が配車通信機器(受信専用)に入り、トランシーバーのように通話が可能。
(民間事業者のサービスを利用した場合)公平性の確保のための取組
- 利用者に応分の負担を求めるため、料金はエリア間の移動で設定し、タクシーの1/2程度の金額を目安として設定。
サービスの安全・安心を確保するための取組
- 運転手は安全運転講習を受講したうえ、運行管理者による運行前後の点呼、車両点検、ドライブレコーダーの設置、地震発生時の対応マニュアルの周知等により、安全性の確保に努めた。
- 事故で補償が発生した場合には、運転手の任意保険を優先的に使用するが、補償額が不足した場合のため、運営主体において不足分を補填する保険に加入。
法律や条例との整合性を確保するための取組
- 道路運送法で定められた「公共交通空白地有償運送」の登録を受け実施するため、三重運輸支局と協議を重ねた。
- 紀北町地域公共交通会議の委員として、利害関係者であるタクシー事業者や福祉タクシー事業者などを加え、意見聴取と事業への理解を求めた。
補完・連携した既存の公共サービスの内容
- 熊野古道カードサービスと連携し、地域内の商店で利用できる「熊野古道カードポイント」をあいのり運送の利用額に応じて付与した。
その他
- 会員登録制のため、ICカードによる決済を実施。
- 利用促進策として、初めにICカードに2,000円をチャージした状態で会員に配布。
残された課題、継続取組事項
- 事故が発生した際に運転手の責任となる心理的な負担や、拘束時間に見合った報酬が担保されていないなど、継続して運転手を確保する体制が未整備。
- 町内全域での運行や、早朝夜間の運行など、町民の移動ニーズに合った運行の検討。
- シェアリングエコノミーによる実証事業を通じて得た町民の貴重な意見やニーズを活かし、町内全域を運送区域とした市町村運営有償運送によるドアツードアでのデマンド運送を計画し、2019年度中に実証実験を実施予定。
連絡先
紀北町
企画課企画係
奥村 京英
kikaku@town.mie-kihoku.lg.jp
0597-46-3113