取引デジタルプラットフォーム新法案に関する当協会意見

取引デジタルプラットフォーム新法案に関する当協会意見

現在、政府は、デジタルプラットフォーム企業を対象とする新法案について、今通常国会への法案提出を目指しています。

本年1月25日に開催された消費者庁検討会において、新法案の具体的内容が示されました。https://www.caa.go.jp/about_us/about/plans_and_status/digital_platform/consumer_system_cms101_210125_02.pdf

この新法案に対する当協会としての見解は以下の通りです。当協会としては、引き続き、シェアサービスを安心して利用できる環境の整備に向けて、事業者及び政府と緊密に連携して取り組んで参りたいと存じます。

 

<取引デジタルプラットフォーム新法案に関する当協会意見>

1.取引デジタルプラットフォーム提供者(取引DPF)の努力義務について

  • それぞれの事業者の置かれている状況等の違いを考慮せず、小規模事業者にも一律に体制整備等の対応を求めるのは避けるべき。小規模事業者にとって遵守することが難しい内容が含まれることになれば、市場への参入障壁となり、新たなイノベーションや市場の発展を阻害しかねない。
  • 具体的には、事業者の規模等を問わず取引DPFに対する規定が適用されるとした上で、消費者保護のために果たすべき役割の具体的な内容については、指針において、事業者の規模やサービスの性質・規模等に応じて、期待される水準を区別して記載すべき
  • 利用者の安心安全を確保するためにどのような措置が適切か、そして事業者がどのような措置を現実的に講じることができるかは、各事業者の規模や、サービスの性質・規模等によって異なる。そこで、指針は、各事業者の自主的な判断を尊重し、望ましい措置を、参照すべきベストプラクティスとして例示的に記載するにとどめるべき
  • 新法が市場の参入障壁として新たなイノベーションや市場の発展を阻害することがないようにするには、指針が上記のような形で策定されることが極めて重要であり、このことを担保するための規定が新法の中に明示的に盛り込まれるべき
  • 仮に取引DPFが果たすべき役割が法的義務ではなく努力義務であったとしても、その具体的内容を定める指針は、実務上大きな影響力を持つこととなる。したがって、取引DPFが果たすべき役割の法的効果の在り方とは関係なく、指針は官民協議会の意見を聴いた上で策定されることを望む
  • シェアリングエコノミー認証制度は、シェアリングサービスについて、新法で求められる措置をプラットフォーム事業者が講じているかどうかを審査基準として含むものである。したがって、シェアリングエコノミープラットフォームについては、シェアリングエコノミー認証マークを取得していれば、必要な措置について指針で求められる水準を満たしているとみなされるなどの旨を、指針の中で定めて頂きたい(無論、シェアリングエコノミー認証制度だけを優遇せよという趣旨ではなく、消費者庁に業界団体が申請を行い、第三者による客観的なモニタリングが出来ているとして認定を受けた制度も対象とする等の制度が一つの試案として考えられる)。

 

2.取引デジタルプラットフォーム官民協議会について

  • 新たに組織される官民協議会の運営や実務的な対応が極めて重要になると思われる。この点、当協会はシェアリングエコノミー認証委員会において3年間にわたるモニタリングの経験と実績を有する。協議会組成の際には、当協会も構成員として参加させて頂くとともに、シェアリングエコノミー認証委員会の委員も幅広く採用して頂けると、共同規制モデルの更なる発展に繋がり得ると考える。

 

3.今後の検討課題について

  • 今後、CtoC取引における開示請求権についても検討することとされている。しかし、検討会で多数の委員から指摘があった通り、(一般消費者がサービス等の提供者にもなることが想定され、かつ、当該プラットフォーム内で立場が入れ替わることがよくある)CtoC取引における個人情報の開示については、極めて慎重な検討が必要であり、避けるべき。なぜなら、利用者が個人である場合に連絡先情報を開示すると、かえってトラブルの拡大を招きかねない危険(ストーカー被害等を招く恐れ等)があり、ひいては安全性に対する不安からサービス利用を控える利用者が増え、市場の成長阻害につながりかねないことも懸念されるためである。プラットフォーム事業者が弁護士法に基づく照会に対し、必要かつ相当と認められる場合に限り開示に応じるという現状の運用で対応すべきと考える。
  • また、小規模な取引の多いCtoCの取引の場合、訴訟等の法的手段による解決は断念せざるを得ないケースが多いため、相手方の連絡先情報を特定できるようになったとしても、根本的な解決にはならないと考えられる。トラブルの拡大を防ぎつつ、目的実現の手段としてより有効なのは、当事者間の迅速かつ円満なトラブル解決をプラットフォーム事業者が支援できる仕組みそのものを官民連携して整えることであり、検討会でも指摘されている通り、ODR(オンライン紛争解決手続)の活性化についての検討をスピード感をもって進めることが重要である。
  • 尚、ODRの費用をプラットフォーム事業者が負担する場合、その費用は一律利用者に転嫁されることとなるが、一方でトラブルは誰にでも起こることではなく、取引ルールや社会通念上必要とされるルールを守れない利用者に集中して発生することを考えれば、一律利用者に転嫁されることが本当に公平なのかという疑問もあり得るところである。したがって、ODRの検討に際しては、費用負担を誰が行うのか、という問題についても検討されるべき。

以上