支え合いの未来 – シェアへの思い by 家入一真

シェアリングエコノミー協会の代表理事、上田氏と協会のコアメンバーが語る動画シリーズ「シェアへの思い」、第1回目はクラウドファンディングCAMPFIREを提供する家入氏がクラウドファンディングの可能性と、地域支援や新しい経済の在り方について語ります。シェアリングエコノミーの未来に向けた熱い思いをご覧ください。

家入一真

シェアリングエコノミー協会 幹事、株式会社CAMPFIRE 代表取締役
2003年株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)創業、2008年JASDAQ市場最年少(当時)で上場を経て、2011年株式会社CAMPFIRE創業、代表取締役に就任。2012年BASE株式会社を共同創業、東証マザーズ(現グロース)上場。2018年ベンチャーキャピタル「NOW」創業。Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング 2021」にて第3位に選出。その他、京都芸術大学の客員教授やN高起業部の顧問等を務める。

公式サイト: https://camp-fire.jp/
X: @hbkr

上田祐司

シェアリングエコノミー協会 代表理事、株式会社ガイアックス 代表執行役
1974年大阪府生まれ、1997年同志社大学経済学部卒業。大学卒業後は起業を志し、ベンチャー支援を事業内容とする会社に入社。一年半後、同社を退社。1999年、24歳で株式会社ガイアックスを設立する。30歳で株式公開。 ガイアックスでは、「人と人をつなげる」のミッションの実現のため、ソーシャルメディア領域、シェアリングエコノミー領域に加え、web3/DAO領域にも注力し、分散型自律組織やコミュニティの分野を強化。また、新規事業・起業を支援するスタートアップスタジオとして社会課題の解決に取り組む。 一般社団法人シェアリングエコノミー協会の代表理事を務める。

公式サイト: https://www.gaiax.co.jp/
X: @yujiyuji

自己紹介

上田

みなさん、こんにちは、シェアリングエコノミー協会の代表理事の上田でございます、これからシェアリングエコノミー協会を運営する、コアメンバーによる、シェアへの思いを語るというシリーズで、動画を配信していきたいなと考えています。
第1回目のスピーカーは皆さんもご存知の家入さんに来ていただきました。家入さん、色々な事業に 取り組んでいらっしゃると思いますが、直近で一番力入れてらっしゃるのがCAMPFIREですね?

家入

CAMPFIREという、クラウドファンディングを提供している会社の 代表をやっていまして、もう13年目になります。
立ち上げたのが2011年で、東日本大震災の直後で、当時まだクラウドファンディングという言葉が、全然ないような時代というか、日本ではまだクラウドファンディングというもの自体が、そもそも存在しないという、READYFORさんがちょっと早くて その後ぐらいに出てきたという感じですね。
僕らクラウドファンディングは、さまざまな活用方法があり、今ご覧いただいているような新商品の発売の支援や、今は特に能登の支援などにも力を入れています。立ち上げが東日本大震災直後というのもあり、震災や災害で困っている地域の支援にもクラウドファンディングを使っていただいたり、地域の困りごとや新しいチャレンジへ僕たちは常にセキュリティサポートを提供しながら、新しいお金がめぐる仕組みとして、クラウドファンディングを提供しています。


家入

僕らのミッションが、一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる。
というミッションを掲げていて、クラウドファンディングの本質って何だろう? ということを、常に社内でよく話し合うのですが、クラウドファンディングって、色んな使われ方があるのですが、やはり僕らが思うクラウドファンディングの本質というのは、これから先、どんどん人口が減っていく中で、地域をはじめとして経済であったり、あらゆる産業や市場、そういったものが小さくなっていかざるを得ないという中で、これまでは大きな器で、なんとかみんなその上で経済活動や様々な活動することができたのだけれど、その皿自体が どんどん小さくなっていかざるを得ない、そういった中でやはりそこから、こぼれ落ちる人たちがどんどん出てくる、もう出てきている。そういった中で声をあげたくても、あげられなかったり、挑戦したくてもできない人たちが出てくる中で、そういった方々にとっての社会的な包摂であったり、金融包摂の仕組みとしてクラウドファンディングがある、と信じています。
こぼれ落ちていくような方々のための、新しい受け皿というか、支え合いの経済をつくっていく、というところを、クラウドファンディングを通じてやっていきたいと思っています。

上田

私も気がつけば、年間で5〜10回は何かしらのクラウドファンディングに関わっていますが、家入さんが当時いち早く立ち上げた時に描いていた世界観は、今どのくらい実現できていると感じていますか?

家入

まだ10%ぐらいですかね。
クラウドファンディングをこの13年間やってきた中で、色々、震災であったり災害であったり、2020年のコロナ禍でも、すごくクラウドファンディングの活用が、大きく広がったタイミングでもあって、コロナでやはり日本中の地域の飲食店さん、宿泊施設さん、生産者さんとか、そういった方々がすごくダメージを受けていた中で、CAMPFIREを使っていただくケースが、すごく増えました。

大きく流通額も含めて伸びたタイミングでは あったのですが、自分たちとしては、困難が生じた時に伸びる というものではなくて、僕らの努力で、もっともっと支え合いの経済が、もっと当たり前に社会としてなっていさえすれば、例えば、コロナであったり、これから先も多分いろんな出来事があると思うのですが、そういった時にその支え合うというところが、もっと当たり前な社会できていたはずなのに、力不足でまだまだ というところもあります。

僕らが実現したいと思っている社会というのは、逆に言うと1年とか2年とか5年とかで達成できるとは、立ち上げた当初から全く思っていなくて、クラウドファンディングという言葉も まだなかったですし、クラウドファンディングみたいな仕組みは、寄付文化がない日本だとうまくいかないなんてのも、すごく言われたりもしたんですけれど、僕はそんなことはないとずっと思っていましたし、日本においてこれから先 必要になっていく機能である、という風にも思ってはいたので、短期で成功するビジネスではなくて、10年、20年、30年かけて、支え合いの経済というものを広げていく というところを、実現したいなというふうに思って立ち上げたので、10年経ちましたけど まだ10%くらいという感じです。

上田

これで10%ということは、社会のインフラ的な部分までということですよね?

家入

そうです。
まだまだインフラにはなれてないなという、悔しい思いというか、10年やっていく中で流通額自体は、結構伸びてきた部分はあるのですが、まだまだ目指す世界には桁がいくつも足りないな という感じです。

上田

私も普通のいち人間として、見ている皆さんもそうだと思うのですが、どうせ買うなら困っている方から買えたらいいなとか、どうせ行くならそういう所に行った方がいいかなとか思うことがあります。しかし、そういうものに出会えなかったり目にしなかったりすると、機会がなくて実現できないことも多いです。もっと普及すれば、もっと多くの人が行動するかもしれないですよね。

家入

そうですね、お金の行き交いを、もっとグラデーションしていきたい、という思いがすごくあって、例えば、寄付のように見返りを全く求めない支援が左端にあって、右端には利回りを追求する金融商品があるとします。この左端と右端ってゼロかイチかのような話ではないと思うんですよね。本当はその間にグラデーションのように、色々なお金の流通の仕方があると思っています。

例えば、ふるさと納税も近い部分があると思うのですが、自分が生まれ育った地域に貢献したいとか、困っている地域にちょっとでも手助けができたらいいな、という気持ちで寄付をして、結果的にリターン品があるみたいな。ただその物だけが欲しいわけでもないし、純粋に見返りなく、ただ支援したい、寄付したいというものでもないし、その中間の形態が今どんどん増えていると思います。
なので、クラウドファンディングと一言で言っても、僕たちがやっている購入型以外にも、融資型、株式型、ファンド型などクラウドファンディングが存在しています。投資型のクラウドファンディングでは、出した金額に応じて利回りが返ってくるものが多いですが、そのお金が地域に投じられて、新しい事業が立ち上がり、その事業が地域のためになって、結果、事業としても利回りを出せるし、別の地域のためにもなるみたいな。こういうものも生まれてきています。

お金のコミュニケーションがもっとグラデーションになっていくと思いますし、そういう世界を実現したいと思っています。DAOとかも正にそこに繋がってくる思想なのだと思います。

上田

ますます、そういう世界になると、幸せだなという風に思います。


家入

DAOとかも正にそこに繋がってくる思想なんだと思いますし


上田

そうですよね、そういうのがもっと当たり前になればいいな と思います。


上田

これまでの取り組み

上田

家入さん、今、CAMPFIREに力を入れてらっしゃると思うのですが、これまで本当に多くの事業を立ち上げられていると思います。一つ一つの事業はカテゴリーで言うと、一見、別のようにも見えるのですが、何かしら共通点もあるんじゃないかなと思います。具体的にどういう事業を立ち上げられたのですか?

家入

時系列で言うと、25年ほど前、僕が20歳とか21歳の頃に、paperboy&co.という会社を立ち上げました。
この会社では、個人向けの格安レンタルサーバー「ロリポップ」を提供したり、個人が簡単にオンラインショップを作れるサービス「カラーミーショップ」や、アクセサリーや手芸品を販売できるマーケットプレイス「minne」など、toC向けのサービスをたくさん立ち上げました。
福岡で20歳ぐらいの時にこの会社を立ち上げ、25歳の時にGMOグループに入る形で東京に出てきまして、その後、29歳の時にpaperboy&co.はIPOを果たし、僕はその後退任しました。

そして次にCAMPFIREを立ち上げ、更に翌年にBASEを鶴岡君と共同創業しました。基本的には、paperboy&co.
もCAMPFIREもBASEも、個人やスモールチームでスモールビジネスを行う方々に向けてサービスを提供する会社です。

会社はそれぞれ違うし、やっている事業もバラバラなんですけど、根っこに繋がる思想みたいなものは共通している部分があります。というのも、僕の人生を更に遡るんですけど、中2の時に学校に行けなくなっちゃったんですね。不登校になって引きこもりになって、学歴的には、その後大検を取ったので、高卒認定にはなるんですけど、中学2年生以降は学校に行けていませんでした。

引きこもりになって家から一歩も出られない状況の時、家には父親が持っていたPC98がありました。当時はまだインターネットがなく、パソコン通信の時代でしたが、それを使って知らない人たちとチャットをしたり、コミュニケーションを取ることですごく救われていたんですよね。

いじめられて学校に行けなくなって、引きこもっていると、当時、13歳ぐらいの年齢って、もう世界のすべてが学校じゃないですか。そこから、もう拒否されたというか、学校に行けなくなったという時点で、もう世界からこぼれ落ちたというか、取り残されたというか、そういう思いで本当に鬱々としていたわけですけど、ネットの向こう側には、年齢とか肩書きとか性別とか本当に関係なく、一個人としてコミュニケーションができる人たちがいて、どこの誰かもわかんないけど、それによってすごく救われたんですよね。

僕は、絵を描いたりもしてたんですけど、描いた絵をアップして見てもらったりとか、音楽を作って、見てもらって聞いてもらったりとか、そういうことをしていて、その時の原体験が今でもずっと残っています。

インターネットが起こした革命は沢山あるんですけど、結局、僕にとってのインターネットの本質というのは、本当に力がなくて、名前がなくて、信用もなくて、お金もなくて、そんな人間でも、弱い小さな人間でも、声を上げることができるテクノロジー、それがインターネットの本質だと、ずっと思っています。

なので、そのインターネットというテクノロジーを使って、toC向けのサービスを提供する中で、声を上げたくてもあげられない個人の方が、例えば、最初にホームページを立ち上げて、自己表現を始めてみるとか、BASEを使って趣味で描いていた絵を販売してみるという自己表現から、今度、経済活動につなげていくところであったり、クラウドファンディング、CAMPFIREを通じて、小さなお金でもたくさんの方から、お金と応援をもらって、最初の一歩を踏み出すきっかけを作るとか、会社やサービスはバラバラなのですけど、根っこにあるのは インターネットというテクノロジーが個人を、今風に言うとエンパワーメントするというか、そういった部分におけるサービスを提供する、というところをやってきたつもりです。

上田

そういう思いを持ってされていらっしゃるので、企業さんや働かれる方、はたまた、ユーザーさんからも賛同を得ているみたいな実感はお持ちですか?

家入

賛同を得られているのか、わからないですけど、その本質って何だろうってことを、常に考え続ける事は、大事だなと思っています。

クラウドファンディングって、例えば、1億集めましたとか、大きな金額をたくさん人から集めた、というプロジェクトばかりが、やっぱり注目されてしまうんですけど、プラットフォーム側からすると、そういうプロジェクトを取っていく方が、流通額や売上の貢献も大きかったりするのだけれど、そっちばかり見ていくと、クラウドファンディングを本当に必要としている人たちって、誰なんだろうっていうのは、やっぱり見過ごしてしまうと思うんです。

クラウドファンディングの本質って何だっけ、ということを常に考え続けて、クラウドファンディングというのは、インターネットとテクノロジーが起こした革命、要は、個人が小さくても、最初の一歩を踏み出すことができる、それを後押しするのがクラウドファンディングの本質である。

もちろん大きなプロジェクトも、それもまた一つの挑戦だから応援はするけれども、僕らが本当に向き合うべきは、声を上げたくても、これまではあげられなかった、本当に小さな方々、小さな個人の方々、そちらの方に向かって、プラットフォームを提供していくべきだと、そういったことを常に、皆と一緒に考え続ける、議論し続ける、その思想みたいなもの、哲学みたいなものを、とにかく発信し続けています。

僕がXであったり、そういったSNSとかも含めて、もう何かずっと同じことを言い続けてるというか、クラウドファンディングの本質はこういうことですとか、これから日本や地域において、何が必要なのかとか、そういったことも含めて、思想としてこう語っていくことが、すごく大事だなと思っていて、その結果、その思想に共感をしてもらえたり、だから、じゃあ色々プラットフォームがある中で、CAMPFIREを使いたいと思いましたって言ってもらえたりとかは、あるのだと思うのですが、何かそういう感じなのかなという風に思います。

上田

思想を語るというところの方に、少しフォーカスしてお伺いしたいのですが、例えば、CAMPFIRE作られましたと、今も社員さんたくさんいらっしゃると思います。
日頃、どういう形で思想を語られたり、どういう形で組織内で確認したり、例えば、SNSでつぶやいてるから、それを皆、見といてよみたいな話なのか、もうみんな全員出社させて、膝突き合わせてやってますみたいな話なのか、もう少しその辺りを聞かせて下さい。

家入

まず前提として、僕は、起業家というのは語り部であるべきだ、というふうに思っていて、起業した最初の日から、ずっと自分の思想とか思いというのを、語り続けるべきである、それは対外的にもだし、社内にもそうだし、語り部であり続けるべきだ、という風に思っています。
じゃあ、語るべきことは何かというと、なぜ自分はこの会社を立ち上げたのかという、自分の原体験に紐づく、なぜ自分たちがこれをやらなきゃいけないのかということです。

起業する理由って色々あっていいと思いますし、人それぞれだと思うんですけど、例えば、この市場が伸びてるから、儲かりそうだと起業する方もいるかもしれないし、AIが来てる、Web3が来てるから、その領域で何か面白いことできそうだって、起業する方もいると思うし、いろんな理由があるんだと思うんですけど、僕は、どこまで行っても原体験で縛られてるというか、自分がこういう人生を送ってきました、中2で引きこもってインターネットによって救われました。
そんなかつての自分のような人間が、まだまだ、この世の中には沢山いて、そういった人たちがこういうサービスがあったら、最初に一歩踏み出すことが、出来るのではないかという、それは他の誰かがやるのではなく、僕がやることに意味がある、というふうに思っています。

そこには物語が生まれる、そして、この物語が思想になり哲学となっていく、プロダクトにおける哲学になっていくんだという風に思っているので、その物語を語っていくことが、すごく大事だと思っています。
何かこういうとちょっと偉そうですけど、この物語に参加したくて仲間が入ってきたり、ユーザーが使ってくださったり、例えば、資金調達をするのだったら、株主さんもその物語に参加したくて、出資してくれるんだと思うんですよね。だから物語というものの重要性みたいなものは、自分の中でも大事にしている部分です。
なので会社を立ち上げたその日から、ずっと語り続けることの大事さ、というのは、自分の中で思ってはいて、じゃあ、それをどういう風に、言語化して、伝えていくか、みたいなところで言うと、僕らのCAMPFIREは、ミッションと行動指針があるのですが、これはすごく皆も大事にしてくれています。

今、200人ぐらいの社員がいるのですが、皆、フルリモートで、日本中に散り散りなので、普段、会うことはないのですけれど、それでもこのミッションとバリューのところを、すごく大事にしてくれています。
例えば、開発チームがこういう機能をつけよう、ああいう機能をつけよう、と議論している時に、いや、この開発はそもそもミッションの達成に、つながっているのか否か、みたいなところで、チーム単位、個人単位で意思決定が、ミッションに紐づいて行われていて、それによってすごくスピーディーな、意思決定がなされています。
なので、そこの部分はすごく皆大事にしてくれているところです。

じゃあ、それをどう浸透させていくかというのは、なかなか難しいところではあるのですが、僕は毎月、オンラインですけれど全体会議をしていて、その最後のパートで話しています。
最近、全体会議も盛り上がりすぎて、僕のパートがだんだん削られていって悔しいのですが、人前で喋るのがそもそも得意でもないので、全体会議の最後に喋らなければいけないのは、憂鬱でもあるのですが、でも伝えなきゃなと思って、頑張って喋っているという感じのなのですが、ほぼ毎回、ミッション・ビジョンの話しかしない感じです。
それぐらい僕らは、ミッション・ビジョンを大事にしていて、語り続けるというか、もう何回でも何回でも、また同じこの話してるわって思われてるなって、こっちにも感じるんですけど、それでも言っていくことが大事だなと思っています。

上田

これがプロダクトの、人格に現れてるんだろうな、というのをすごく聞いていて感じました。
なるほど、本当に勉強になります。ありがとうございます。


上田

シェアへの思い

上田

家入さんは先ほどインターネットについて評価していましたが、特にどんな個人にもエンパワーメントをもたらす点が素晴らしいとお話ししていました。シェアリングエコノミーについても同様に、世の中に広がってきていますが、この産業をどのように捉え、どう評価するのか、個人的な見解をお聞かせいただけますか?

家入

インターネット自体がシェアリングエコノミーに繋がるのは必然だったと思います。かなり前に糸井重里さんが『インターネット的』という本で言っていたことで、すごくインターネットの本質を捉えているなと思った発言があります。SNSが登場する前だったと思うのですが、インターネットの本質の一つは「おすそ分け」だと述べていました。これはまさにシェアのことを言っているんだなと感じます。

インターネットによって、あらゆるものの摩擦係数が減り、行き交うようになりました。例えば、作りすぎたおかずを捨てるぐらいなら、近隣の方におすそ分けをする、これは物理的なおすそ分けですけど、それだけに限らず、例えば、美しい景色を見た時に、この景色を伝えたいっていう気持ちであったり、これはもうインターネットが出る前から、そもそも人類が持つ根源的な欲求として、元々あるものだと思うんですよね。
何か感動したり震えるような体験をした時とかに、それを伝えたいっていう気持ちが芽生える、というのは 人間が元々持っているものだと思っていて、それがさらにインターネットによって、伝えやすくなった、シェアしやすくなった、こんないい話があるよっていうのを、リツイートしてお知らせしたり、こんな綺麗風景を見てきたよってこと、たくさんの人にシェアしたりとか、もちろん良い側面、悪い側面あると思います。

負の感情も同じように拡散しやすくなったし、攻撃的な発信も含めて、シェアしやすくなったという側面も、もちろんあると思うんですけれど、人間がそもそも持つ、感動を更に伝えたいという、おすそ分けしたいという気持ちを、より加速させたのが、インターネットだったと思っているので、ある意味シェアというものに、インターネットが繋がっていくのは、必然的だったかなという風に思っています。

上田

インターネットの負の側面についてはどうお考えですか?

家入

インターネットは個人の力をエンパワーメントし、弱き個人が声を上げることができるテクノロジーだという話をしましたが、それにも良い面と悪い面があるわけです。僕はインターネットによって救われたし、インターネットによって救われた人はたくさんいると思いますが、一方で、それが行き過ぎた世界になってきているとも感じています。

インフルエンサーであったり、個人の力で生きていく、好きなことで生きていく、みたいなキャッチコピーもありますけど、それが行き過ぎると、上手くいかなかった人たちがたくさん生まれ、その結果、それは自分の責任だよね、自己責任だよねっていう、自己責任が突きつけられる世界になっていると思うんですよね。
インターネットに限らず、あらゆるテクノロジーや進化には、良い面だけでなく悪い面もあります。インターネットが引き起こしている負の側面としては、個人が声を上げられるようになったという良い面もあれば、それでも上手くいかなかったり、炎上して叩かれてしまうなど、自己責任で片付けられる世界にもなってきていると思います。

僕は、挑戦したけれども上手くいかなかった時の受け皿とセットで、挑戦というものが存在すべきだと思いますし、「自己責任」という言葉が好きではないです。自己責任で片付けられない社会をどう作っていくかという点では、支え合ってどう生きていくかに繋がっていきます。それはシェアの概念とも繋がる部分で、シェアは贈与と繋がっている概念です。

人類は未熟な状態で生まれ、自分では何もできない赤ちゃんとして生まれてきます。人間の赤ちゃんは親の保育なしでは生きていくことができず、親もその赤ちゃんを抱えた状態で生きていくためには周りの助けが必要です。つまり、もともと人間は他者からの贈与によって生きていくしかない生き物なのです。
贈与というのは、信頼関係や助け合いといったお金で買えないものです。僕らがやっているクラウドファンディングは単純な見返りを求めない贈与とは形が違うかもしれませんが、その思いと共に応援し支援するという気持ちと共に、お金が行き交う世界を作ることで支え合いの経済を作っていくのが、僕らの実現したい社会です。

上田

私も自己責任という単語が、嫌いというほどでもないんですけれど、何か自分と他人が分かれているというのは、非常に何か許せなくて。
例えば、一般的に結婚とかすると、若干、自分と妻との境目が、曖昧になってくるような気がしていて、どっちの所有物かもあいまいだし、妻が叩かれると、僕が叩かれてる気もするし、曖昧になってくる気がするのですが、インターネットを通じて、どこまでが自分で、どこまでが知り合いで、どこまでが他人か、わからない社会みたいな、人が叩かれているのを見て、痛いと思いたいし、そこを曖昧にできないかなと思っているんですよね

家入

ある意味、グラデーションになっていく、という感じなんですかね?

上田

そうですね、正直、僕は別にそこまで、心優しい人間じゃないのですが、日頃から毎日喋っていると、やっぱり感情移入もするし、その人のことを大切にしようかなと思うのですが、日頃から赤の他人と喋ってたら、赤の他人に感情移入するよなっていう風に思っていて、私は、カウチサーフィンというサービスを、結構使ってたのですけど、昔、放射能が漏れたから、本当にこう毎週いらっしゃってたのが、急に来なくなって、逆に来たメッセージが「Hi,Yuji」みたいな、俺めっちゃ広い家にカナダで住んでるから、俺んとこ来いやみたいな、そんなメッセージがやってきて、このカウチサーフィンで日頃いつも喋ってるから、カウチサーフィンの仲間が皆、家族みたいな、何かそういうような社会が、それは、もうカウチサーフィン内で、また固まってるのはちょっと腹立たしいんですけど、そういう社会にならないかなと思ってはいます。

家入

すごく仏教的な思想につながってくる、部分かなと、お話を聞いてて思いましたね。
全てで自分だけで生きているのではなくて、全てがこう繋がっていて、それが相互に作用し合っているというか、それによってこう、じゃあ人間って、自分は一人、個体であるって、思い込んじゃっているけれど、実はそんなことないんじゃないというか

上田

そうですよね。

家入

面白いですね。

上田

その観点で私も自己責任という単語は、家入さんと一緒で、あんまり好きじゃないかな という感じはしましたね。

家入

やっぱり僕らは資本主義の中で生きていて、資本主義がすごく加速して増大していく中で、自己責任というものもセットで広がっていったのかなぁという感じがすごくします。

何かに挑戦して、それによって頑張ったり成功すれば莫大な富を得られるかもしれないけれど、逆に上手くいかなかった時には、それは自分がやった結果だよねっていうことで自己責任を突きつけられる。資本主義の流れと自己責任論が同時に広がっていったのかなとすごく思います。

ある意味、シェアリングエコノミーやクラウドファンディングで支え合いの経済を言っているのも、資本主義の次の世界をどう描くかに繋がっている話だろうなと思います。若い頃は、資本主義をぶち壊すくらいの過激な思想を考えたりもしましたが、今では資本主義というレイヤーの上に僕らは生きていて、その上に個人を中心とした小さな経済圏を作り、それが重なり合う世界をどう作っていくかが、CAMPFIREで実現すべき世界だと思っています。

もちろん、その先にどういう世界が待っているのかはまだ見えていない部分もありますが、少なくともこれまでのように大きな国や大企業に守られる時代ではないと思います。インターネットやグローバルカンパニーが国の境界線を曖昧にしてきた今、逆に国は再び形を取り戻そうと躍起になっているようにも見えます。

かつてのように大きな物語、例えば日本が高度経済成長していた時代のように、「昨日より今日、今日より明日、みんなで頑張って豊かな国を作ろう」という物語を信じることができた時代は終わりました。大企業にいるから安全安心という考え方も、例えばSHARPのような大企業が大変なことになる時代ですから、大きなものに依存する生き方はしんどくなっていくと思います。

なので、個人を中心とした支え合いの経済が重なり合うような、一つ一つは小さいけれど、それが重なり合っていくような世界。それが僕の中で持っている映像というかイメージです。

上田

ありがとうございます、色々とお話をいただきましたが、本当にこう僕自身もお話を聞いていて、改めてそうだよなとか、もっとやらなきゃな、ということを感じました。
視聴者の皆さんもどうだったでしょうか?
支え合いをするもっと一人一人の人が、活躍できるようにしたり、皆さん自身が支えれることは、支えてみようかなと、思っていただけたらいいなぁ なんて思います。
では、本日はこれで家入さんからの、お話を終わりたいと思います。
家入さん、どうもありがとうございました。

家入

ありがとうございました。