新成長戦略『未来投資戦略2017』で30地域の”シェアシティ”を目標に

政府は6月9日、臨時閣議で成長戦略として「未来投資戦略2017」を決定しました。2016年の「日本再興戦略」に続き、シェアリングエコノミーを重点施策として位置付けています。

首相官邸公式サイトより(http://www.kantei.go.jp/)。発言する安倍首相

Society 5.0 の実現へ シェアリングエコノミーで社会課題を解決

少子高齢化が進み、労働供給の低下が見込まれている日本経済。今、長期にわたる生産性の伸び悩みを抱え、需要面においても新たな需要が創出できず「『長期停滞』にある」、と『未来投資戦略 2017』の冒頭で指摘されています。この長期停滞を打破し、中長期的な成長を実現していく鍵として、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットとともに「シェアリングエコノミー」を例に挙げ、第4次産業革命のイノベーションがあらゆる産業や社会生活に取り入れられることで、様々な社会課題を解決する「Society 5.0」を実現すると提言しました。

一方で、長期停滞という課題を抱える状況下の日本ですが、優位な環境にあるとも言及。その理由として、シェアリングエコノミーに関わる以下の2つが挙げられています。

(1)日本は世界に先駆けて、生産年齢人口の減少、地域の高齢化、エネルギー・環境問題といった社会課題に直面している。これは第4次産業革命による新たなモノ・サービスに対して、大きな潜在需要があることを意味する。

(2) 第4次産業革命は、生産性の抜本的改善を伴うことから失業問題を引き起こすおそれがある。しかしながら、日本は長期的に労働力人口が減少し続けることから、適切な人材投資と雇用シフトが進めば、他の先進国のような社会的摩擦を回避できる。

そして、第4次産業革命によって「あらゆる世代の意欲ある人々が技術革新を味方につけ、眠っている様々な知恵・情報・技術・人材を『つなげ』、イノベーションと社会課題の解決をもたらす仕組みを世界に先駆けて構築できれば、経済活動の最適化・高付加価値化と活力ある経済社会を実現できる。それは、老若男女、大企業と中小企業、都市と地方を問わず、あらゆる人々や産業にチャンスを与えるものである」と明言し、歴史的転換期を迎える日本において、シェアリングエコノミー推進の重要性を訴える内容となっています。

自治体課題に応じたモデル事例 横展開できる”ベストプラクティス”を

シェアリングエコノミーの取り組みに向けた重要業績指標(KPI)も、具体的に明示されました。2017年度中に少なくとも30地域で”シェアリングシティ”を推進し、自治体におけるシェアリングエコノミー活用の実現を目指します。

このKPIを達成するための「新たに講ずべき具体的施策」として、3つのポイントを挙げています。

まず、2017年1月に内閣官房に設置されたシェアリングエコノミー促進室を中心に、シェアリングエコノミー協会など民間団体の自主的ルールの普及展開による「シェアリングエコノミーの安全性・信頼性の確保を高める」こと。そして、国際的なシェアリングエコノミーのルールづくりに積極的に参画し、日本の取り組み事例を国内外に発信して国際的な合意形成に貢献することを目指すとしています。

さらに、シェアリングエコノミー促進室において民間事業者や地方自治体からの相談に適切に対応し、必要な情報提供や調整、法令解釈に係るグレーゾーン解消制度活用に向けた支援を行います。シェアリングエコノミーの進展・変化によって見直すべき施策や分野横断的課題が生じた場合は、必要な検討を迅速に進めていくとのことです。

最後に、シェアリングエコノミーを活用した地域課題の解決や地域経済の活性化に向けて、「シェアリングエコノミー伝道師」を地域に派遣し、民間事業者と地方自治体が連携できる仕組みの整備を2017年度中に進めます。大都市圏や地方中核都市、過疎地域といったように、異なる課題を抱える地方自治体ごとに”シェアリングシティ”のモデルケースを作り、少なくとも30の地域での実現を目標にします。また、その中で「ベストプラクティス」を取りまとめ、他の地方自治体へ横展開や普及が進むように促していくとのことです。


政府が閣議決定した「未来投資戦略2017」の具体的施策については、以下より閲覧できます。

▼「未来投資戦略2017」具体的施策(PDF)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/seicho_senryaku/2017_all.pdf