欧州委員会がシェアリングエコノミー普及に向け加盟国へガイダンス文書を公表
欧州連合(EU)の欧州委員会は2016年6月2日、報告書「シェアリングエコノミーに関する欧州のアジェンダ」を公表しました。本報告書に法的拘束力はないものの、EUやEU加盟国でのシェアリングエコノミーに関する今後の立法や法解釈に影響を及ぼすことが想定されます。
※原文(英語版)はこちら、当協会作成の仮訳(日本語版)はこちら。
本報告書は新たな経済活動として可能性を秘めた、シェアリングエコノミーの参加者を3つのカテゴリー(サービス提供者、ユーザー、シェアリングプラットフォーム* )に分類し、それぞれの定義や法的義務の在り方について明確化。シェアリングエコノミーが持つ可能性を最大限に活用しようと試みています。
さらに、シェアリングプラットフォーム上のサービス提供者やユーザーの適法性の確認について、法律上の義務として課すべきではなく、自主的措置に委ねるべきであるという方向性を明示。シェアリングエコノミー協会としても、法律上の義務とは異なる、プラットフォームによる技術的、自動的、受動的な自主努力をより一層継続して奨励します。
現在進んでいる民泊サービスに関する法整備は、シェアリングエコノミーに係る立法日本第1号となる見込みです。 シェアリングエコノミー協会は、厚生労働省が観光庁と共同で進めている「民泊サービスのあり方に関する検討会」における「旅館業法施行令・施行規則の改正案」について、2016年3月9日付で意見書を提出しており、この度欧州委員会が示した方向性は、まさに同意見書の内容を後押しするものとなっています。今後、詳細な制度設計においては、本報告書のような精緻な議論が進められることを期待します。
シェアリングエコノミー協会は、シェアリングエコノミーが日本経済の発展を支える仕組み・概念の一つになることを目的とし、シェアリングエコノミーが持つ可能性を豊かな社会の実現に繋げるとともに、その発展に寄与すべく、会員企業の声を集約して提言していきます。
協会顧問・横山経通弁護士のコメント
欧州委員会の報告書は、シェアリングエコノミーを過度に規制することなく、ビジネスモデルの特徴に応じた適切な発展を促そうとするものです。また、シェアリングエコノミーの健全な運営についても自主規制(ソフトロー)によることを推奨するものです。日本のシェアリングエコノミー企業が対等に競争する環境を整えるためにも、本報告書を参考にされることを期待します。
*シェアリングプラットフォームがサービス提供者ではないかどうかを判断する基準として、以下3点を挙げています。
- 価格:シェアリングプラットフォームが「基礎サービス」(underlying service)を受ける利用者により支払われる最終価格を設定しているか。
- その他の主要な契約条件:シェアリングプラットフォームが価格以外の契約条件を設定しているか。
- 主要な資産の所有権:シェアリングプラットフォームが「基礎サービス」(underlying service)提供のために使用される主要な資産を所有しているか。