ISO/TC 324(シェアリングエコノミー)第6回国際会議

【本レポートは日本規格協会HPの転載記事になります】

シェアリングエコノミーの国際規格を開発するISOの専門委員会TC 324(シェアリングエコノミー)の第6回国際会議が開催されました。第6回となる今回の会議は、前回に引き続きオンラインでの開催となり、12月6日~10日の全5日間、日本時間で夜10時から深夜1時まで開催され、日本、カナダ、アメリカ、中国、フランス、イタリア、シンガポール、インド、イラン、ロシアのほか、外部団体としては、国際消費者機構や中小企業標準化団体などから約34名が参加しました。日本からは、議長、国際幹事、日本代表エキスパート含め、計5名が出席し、シェアリングエコノミーの国際ルール形成に向けた議論を行いました。

ISO 42500(一般原則)が発行

 シェアリングエコノミーの一般原則を規定したISO 42500がFDIS投票を経て、発行されました。この文書には、シェアリングエコノミーに関わる基本的な用語(「シェリングエコノミー」,「プラットフォーム」等」の定義、シェリングエコノミーに関わる全ての関係者が遵守すべき原則が規定されています。
▶ ISO 42500 (シェリングエコノミー – 一般原則)
尚、WG1では、コンビーナより新たに「Framework for implementation」を開発する旨の提案があり、先ずはPWI(予備段階)登録し議論を進めていくことで合意しました。

シェアリングエコノミープラットフォ―ムのための国際標準開発が進行

 シェアリングエコノミーの安心安全な取引の促進のためデジタルプラットフォームの果たすべき機能を規定した国際標準、ISO/TS 42501(デジタルプラットフォームの一般要求事項)とISO/TS 42502(提供者の検証のガイドライン)の2つのプロジェクトの審議が行われました。それぞれのプロジェクトで意見照会を実施した結果、各国エキスパートから数多くのコメントが寄せられており、WG2コンビーナの渡辺氏(日本)とWG3コンビーナのYao Xin氏(中国)の進行の下、各国のエキスパートと摺合せをしながら、原案の改訂作業が進んでいます。今後、数回の会議を経て、最終投票であるDTS投票に進む予定です。

SDGsとシェアリングエコノミー

 国際幹事(JSA 遠藤)の呼びかけでシェアリングエコノミーの国際標準化のロードマップを策定するための議論が進んでいます。ケーススタディ収集の結果、人々との交流を生みだすことで人々の孤独を解消する、Well-beingを向上するSDG3につながるケース、就業の機会を創り出すSDG8に繋がるケース、フードロス削減に繋がるようなSDG12につながるケースなど多くのケースをエキスパート間で共有しました。ケーススタディを通じて得られたシェリングエコノミーのバリュー及び課題を基礎にISO/TC 324としての将来の戦略プランを策定してく予定です。

ISO/TC 324決議事項

 最終日には持丸議長の進行の下、各グループのコンビーナから5日間の会議の統括がなされ、ISO/TC 324出席者全員一致で以下12の決議事項を採択しました。今回は新たに、ISO/TC 324の将来のプロジェクトの在り方を検討するためのタスクグループ(Study of future potential new work items)の設置が決定しました。
なお、次回総会は2022年6月にリモートで開催される予定です。

決議59:決議起草委員会の任命
決議60:アジェンダの採択
決議61:セクレタリレポートの承認
決議62:Vocabulary and frameworkのPWI登録
決議63:ISO/TS 42501の次のステップ
決議64:ISO/TS 42502の次のステップ
決議65:コミュニケーションプランの承認
決議66:Task group3の設置のための投票開始
決議67:次の会議

※参考訳になります。

 

会議出席者から

国立研究開発法人産業技術総合研究所 持丸正明氏(ISO/TC 324国際議長)

コロナ禍で遠隔会議が続きますが、それでも活発に議論や意見が交わされる状況でした。TC設立時に掲げていた理念と一般要求事項の標準にメドがついてきたこともあり、一部の参加国には活動が一段落したと受け止められているかも知れません。これは、最初の大枠が標準化できたに過ぎず、シェアリングエコノミーの活性化に向けて、まだまだ標準として取り組むべきものが多いと理解しています。今後の標準策定戦略を考えていく上で、具体的な事例と問題整理が欠かせません。これについて、TGからの呼びかけをしたところ、多くのエキスパートやメンバーボディから興味深い事例が寄せられました。これらを整理して、TCとしての今後の活動の方向性を明らかにし、共有していきたいと考えています。

国立研究開発法人産業技術総合研究所 渡辺健太郎氏(ISO/TC 324/WG 2コンビーナ)

ISO/TS 42501にいただいた多くのコメントを反映する集中議論を継続的に実施しております。来年にはぜひ文書をお届けできるようになるよう、尽力してまいります。また並行して、様々な関係者のお話を伺いながら、シェアリングエコノミーの健全な発展に貢献できる新たな標準化の取り組みも検討してまいりたいと思います。

ZVC Japan株式会社 武田大周氏(ISO/TC 324 日本代表エキスパート)

この度は国内エキスパートとして海外の専門家の方々と様々な意見の交換ができ大変光栄に存じます。シェアリングエコノミーについての基準の議論も進み、有意義かつとても勉強になる会議でした。今後とも協議に参加させていただき、シェアリングエコノミーの活性化につながる基準の策定に貢献できればと存じます。

一般社団法人シェリングエコノミー協会 小出富雄氏(ISO/TC 324 日本代表エキスパート)

デジタルプラットフォームの一般要求事項、及び、提供者の検証のガイドラインの2つの規格の議論が大詰めを迎えています。来年の発行を目標に、実務の観点から有益な規格となるよう引き続き尽力していきたいと存じます。また、これに続く新たな標準化の取り組みとして、両規格とは別の側面からシェアリングエコノミーの発展に資するものがないか、併せて検討していきたいと考えております。

一般財団日本規格協会 遠藤(ISO/TC 324国際幹事、TG1主査)・水野(ISO/TC 324国際幹事補、WG1セクレタリ)

TC設置直後からスタートしたISO 42500(一般原則)が発行しました。この規格がISO/TC 324として、第1号規格になります。2019年にこのISO/TC 324が設置されて以来、国、立場、文化が異なるエキスパートが「シェリングエコノミーとはこうあるべき」と意見をぶつけ合い、合意した成果が本文書になります。この大変難しいプロジェクトをリードしていただいたWG1コンビーナのKernaghan Webb氏(カナダ)及びWG1に参加したエキスパートの皆様に感謝申し上げます。